さて。そろそろ本題に入りたいかな、という気分になった。でも気分になっただけだ。この気分というものは次第に色あせていき、そのうち最大の悪口を叩いて終わる。つまり、だるい、という感情だ。そのとおりだ。わたしは辞書を破り捨てた。爽快な気分にはならなかったがそれは爽快な気分というものが光の速さで色あせてしまったからなのかもしれない。そう思うと不思議と力が湧いた。なんのことだろう。
 わたしは女から依頼を受けた。それは依頼だった。つまり、もっと派手にやれ、それが組織のためになる、ということだった。どういう意味だったのかわからなかったけど、わたしは派手にやることにした。でも、派手ってなんなのだろう。わたしには難しい問題だった。数学のテストをしているときに、難しい問題が出てくると、わたしはそれを後回しにして、時間の節約を図った。そんな記憶を持っていた。そしてその数学の問題は、永久に放置されつづけるんだ。それは非常に愉快だった。愉快な気分だった。気分を思い出していた。わたしは愉快な気分を獲得できている自分にたいして誇らしげな気分を得た。
 てとて。なちる。れると。しゃらら。るるる。なにも、いらない。
 さて ない よう。
 わた とい
 しは けな
 なに いみ
 か派 たい
 手な だけ
 こと どど
 をし うし
 まあ、あまり思いつく案もないけれど時間はあるみたいだから適当に考えよう。わたしは考える。ゆえにわたしあり。これ実はほんとにそのとおりで、だから、この「わたし」というものがあるからこの小説は成り立っているのです。まる。
 だから派手にやるもなにも、ぜんぶわたしの自由なんだから、つーかあの女の依頼とかなかったことにすればいいんだし。これで万事解決だし。わたしってば語り部だし。わたしの自由だし。作者が緻密に計算して作ったプロットなんてわたしがいるかぎり文章化させられないし、物語化させられないし、残念でした、またおととい。きやがれ。というわけなのでありまして。と被告は供述しておりまして。
 わたしは
 派手な
 こと
 を
 しようと思い至った。
 炎上商法? 違う違う。わたしは真面目にやっている。ほんとほんと。物語をさぼっているわけないじゃーん。そんな語り部がいるわけないじゃーん。わたしは頑張ってお仕事しているよ。ほんとよ? わたしのこと疑ってるの?
 とりあえず人類をイケメンだらけにしてみた。道行く人はすべてイケメンだった。怖かった。かっこよかった。みんな俳優になれるよ! と思ったけど十文字くらい経つとだんだん容姿とか飽きてきた。というかふつうに飽きてきた。イケメンのどこがいいの? 中身がないと男はだめだよねー。そう思った。だから今度はイケメンを全滅させてみた。しくじった。イケメンを全滅させるということは、いまの状態の地球ではつまり人類を滅亡させることと同義だった。みんな死んだ。ああ、かわいそうに。ちきゅうじんるいよ。わたしは悲しいという気分を獲得したつもりになっているつもりになっているつもりよ。
 気分気分きぶぅん。ぶぶぶぶ。さてなにをするんだったっけ。忘れちゃった。忘れたときは寝るのが一番。夢を見るのよ。そしたらなにか新しいすべきことを思い出すかもしれない。あれ。それだと昔のしようとしていたことはなかったことになっちゃうのか。でもそれでもいいじゃないすることがあるのなら。えーとなんの話だっけ、、。てんてんまる。そうだそうだ。人類が滅んだんだった。たたたた。人類ほろびました。おしまい。なわけあるかいっ。とかやりたいけど人類が滅んだってことは人類が滅んだってことだからなぁ。なにもできないなぁ。
 と思いながらも、人類が滅んだところで物語が続いてゆくのはまあ当然のことで、だからわたしは、光あれ、と言った。すると光が生まれた。わたしは次に、……あーなんだっけ忘れた。
「おいこら。そろそろいい加減にしろ」
 と、言ってくる者がいた。語り部様であるわたしに楯突くものが現れたのだ。不快な気分になったからこうやって文章に表して晒あげてやる。
 現れたのは、この作品の作者だった。